コンセプト

予想外の部屋。

 名古屋市中区千代田。そこは大須にも矢場町にも、鶴舞にも金山にも近い立地。今回ご紹介する物件はそんな千代田にある。新堀川のほとり、地下鉄名城線「東別院」駅から徒歩6分の場所。大通りの「山王通」から少し離れているので、都会にありながら騒々しさはあまり感じない。

 「フローラ千代田」は、ごく一般的な7階建ての賃貸マンション。しかし、この一室にその外観からは想像もできない部屋をつくってしまった! それがこの「台湾幻想茶屋」である。

妖しさという魅力。

 モデルとなったのは台湾北部の港町「九份(きゅうふん)」。ジブリ映画『千と千尋の神隠し』の油屋(あぶらや)をイメージさせる建物が林立し、その独特の雰囲気で観光客にも人気だ。今回の物件は、そんな九份に建つ妖しげな建物を再現した。

 これまでのコラボルームは、どちらかというとポジティブな雰囲気の物件が多かった。いやしやゆとり、都会的でおしゃれ……など、そのイメージはさまざまだが総じて明るい感じだ。しかし、今回はその正反対を行く。

 コンセプトは「昼間なのに何だか薄暗くて妖しげ。奇々怪々な雰囲気で謎めいた部屋」。そこにはこれまでのような明るさや爽快さは一切ない。しかし「ネガティブ=魅力がない」だろうか? いや、まったくもって違うと断言しよう。たとえば、薄暗い路地に佇む、何屋か分からないような妖しい店があったとする。その古びた扉が少し開いていたら、思わず覗いてみたくなる衝動に駆られないだろうか? 「ある、ある!」と思った人はこの物件に住む資格アリだ。

世捨て人にならないで!

 もし台湾の九份に行ったことのある人なら、詳しい説明をしなくても充分に理解していただけるはずだ。夕暮れの町に佇む茶屋や夜の寺院。その薄暗い町を照らす無数の赤いランタン……。ここはそんな妖しげな空気感が好きな方にぜひ住んでいただきたい物件だ。

 部屋は住まいとして快適に生活できる間取りや設備を備えた上で、妖しい雰囲気を見事に醸し出している。家具や小物などをうまく揃えれば、妖しい度はさらにアップするだろう。赤や緑のラグマットやアジア系のアンティーク家具が王道だが、あえて西洋モノのアンティーク家具を持ってくるのもいい。そういう統一感のなさも、現地っぽくてリアリティがある。

 「台湾幻想茶屋」は、おそらく日本にある賃貸住宅の中でも、特異さで言えば指折りの物件に仕上がっているはず。しかし、ひとつだけご注意を。この雰囲気に飲まれると、窓辺でパイプを燻らせながら下界を見下ろす世捨て人になってしまう可能性がある。部屋の持つ「負のパワー」に負けないくらい気合いの入った暮らしをしていただきたい。

● 施工前イメージスケッチ

クリックで拡大表示されます(画/四季川)