コンセプト

✔コンテナに住む夢をみた少年。

 この企画に参入したその時から、コンテナの部屋を作りたかった。というか、私自身が昔からずっとコンテナに住んでみたいという夢を抱いていた。物心ついた時から、一番落ち着く空間はコンテナのような空間だった。友人と「かくれんぼ」をするときは、専ら狭い物置のような狭い暗黒の空間にジッと隠れることをストイックに挑戦し続けて生きてきた。それが初めて遊ぶ相手の家や敷地であろうともお構いなしである。今までずっとそうやって生きてきた。

✔脳裏に焼き付いているコンテナのデザイン。

 そう、思い返せば私がコンテナに魅せられたのにはキッカケがある。あれは小学校2年生の時に初めてコンテナというモノに触れた時のことだ。屋外での「かくれんぼ」のさなか、私は便意を我慢できずに貸しコンテナの陰に隠れて「マーキング」をしたのである。年頃の男子にとっては、一か八かの大博打である。友人たちに見付からないよう大急ぎで体内の悪魔を荒野へ解き放ち、ホッと一息。その時に見上げた空は、赤茶けた凹凸のある無骨なデザインのコンテナに囲まれたとてつもなくカッコ良い空だった。

✔コンテナは買えない。

 私は尻を拭くのも忘れ、空を眺めていた。その時、私の頭の中では何故か親父がよく聴いていたビートルズの「ラヴ・ユー・トゥー」のイントロのシタールの音だけが繰り返し流れていた。凸凹の壁面も非常に機能的で魅力的だった。ボールを投げつけると、あらぬ方向に跳ね返してくれるので、幼い私の足腰を大いに鍛え上げてくれた。当時コンテナが何たるかも分かっていなかった私だが、入り口の看板に『月8,000円〜』と書かれているのを見て、オカンに「アレは8,000円で買えるのか?」と訊ね、理解するまで説明してもらい初めて賃貸(レンタル)という言葉を知ったのである。

✔長年の夢が現実に……。

 そこからの戦いは長かった。中学生になってからは友人たちに「皆で借りて秘密基地にしようぜ」と唱え続けたのだが、当時の皆の小遣いは平均月3,000円。さらに今になって冷静に考えてみれば、未成年のクソガキに貸してくれるワケもないのである。まさに馬鹿。当時、マーキングにより私のナワバリと化した貸しコンテナ空間だが、時代の移り変わりとともに淘汰され、今ではコンビニへと姿を変えている。

 そんなこんなで、結局何を言いたかったのかというと、私の長年の夢の空間を造ってもらえるって自慢したかっただけなのである。今の気持ちは、まさに夢に見た女を手に入れたような気分なのだ。

株式会社Village Vanguard webbed ヴィレッジ不動産ゼネラルマネージャー
香月 信吾

Village Vanguardの店舗にて店長を務めるという経歴を経て、
2013年8月より「ニッショー×Village Vanguard コラボルーム」企画チームに参加。
本企画のアイデアマンとして斬新なコンセプトを次々に発案している。

今回は約1年越しの念願が叶って、コラボルームプロジェクト第25弾となる
「コンテナ・スタジオ」の企画・制作をプロデュースした。